日ペンの美子ちゃん

実はわたくし、よくりぼんなんかの少女向け雑誌の広告欄に 載っている日本ペン習字協会が主催する講座に応募したことが あります。そう、美しい字を書く子供、 おなじみ美子ちゃんになろうとしたのです。

字がうまくなりたいという本来の思いも あったけれど、今申し込むとついてくる腕時計につられたのも大きかった。 当時わたしはまだ小学生。おまけに弱いお年頃。

たいてい教材と名のつくものは親はちょっと押せば 買ってくれることが多い。確かに いつかやらなくなってもちょっとでもやったほうがマシかもしれない。

備えつきの送料無料のハガキでポーンと投函。 1週間後にお手本の教科書と練習用の書き取り帳のようなものが 送られてきた。これを毎日1ページづつでもやれば どんどん字がうまくなって美子ちゃんになれるという。 何事にも練習なのね・・人生努力なしでは何も達成できないのね・・くぅ、 そんなことを痛感させる教材達。

毎日コツコツやることは、若者にとってなかなか難しい。

初日は5ページ、次の日は4ページ、そしてまた次の日は3ページ・・ とそんな調子で6日後にはすっかり飽きてやらなくなってしまった。 字の練習のための書き取りなんて、ほんとにつまらない。 やらなければいけないというプレッシャーもない。 多少字が下手でも、勉学に支障をきたすことはないのだ。 教材費はもったいなかったけど、払ってしまったものはもう 仕方ない。おまけの腕時計がもらえたからまあいいじゃないか。

そんなわけであっさり美子ちゃんへの道は閉ざされてしまった。


その後腕時計がどうなったかというと、 安い金メッキがどんどん剥がれて、 3ヵ月後には電池がなくなった。わざわざ電池を入れ替えるほどの ものでもないので、しばらく机の引き出しの奥にねかせた後、 年末の大掃除の時にさよなら。ついでに書き取り教材もさよなら。

字・エンド。

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